水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

黒い山猫が庭に居座る

朝起きたら

Artwork by Satoshi Dáte

僕の三鷹にあった実家の中庭に自分と同じくらいの背丈の黒い猫が立ちすくんでいた。

僕はその猫が「メス」であると勝手に確信していた。

 

 

この黒猫はあまりにも大きいので、見たことがない山猫であると感じる。

それか小さいころ憧れがあった「タスマニアデビル」であるとも思える。 毛並みが美しく、ぬめっとしていて、きらきらと光っていた。

 

美しいと同時に、人間ぽく、人懐っこいが、面倒な雰囲気だった。

 

とにかく彼女が立ちすくんで僕をじっとみたり、庭に寝転がったりすることが不快に思った。

 

実際はそこには僕の柴犬がいるはずで、現にいつもの場所に犬小屋があった。ところが、僕が買っていたのは三毛猫もしくは白い猫が中庭にいて、僕の猫(多分メス)のことを心配に思う。

 

案の定喧嘩というより、一方的な攻撃により、僕の猫は目を食いちぎられた。

 

「目ぐらいいいか」と残念に思う自分を慰めるように思う。

 

僕はますます不快に思い、追い出すために黒猫の頭をげんこつで叩こうとする。

ところがどういうわけか(走るときもどうしても速く走れない)動きはおそく、ゆっくりとなり、黒猫のあたまにこぶしをうずめるも、なんの打撃もない。

 

何度も何度もくりかえすが、彼女は目をすこし瞑るだけで、何の効果もない。

 

「ははあ、ぼくはやっぱり殴ったりできない人間なのかもしれない。いや、それとも練習が足りない、もしくは恐いだけなのかもしれない」

 

僕はパンチの練習をボクサーのようにして、また彼女に殴り掛かった。

 

結局はおなじで、何の効果もない。

 

僕は苛立たしくなって、凶器になるような大きなコンクリートでできた廃材をもってきて、彼女をめちゃくちゃにしようとする。

 

効果があったかなかったか、記憶にないが、彼女はすこしおびえたようだ。

 

でも相変わらず、彼女は自分のエリアかのように、寝転がったり、僕をじっとみて立ちすくんだりするのだ。

 

彼女のとがった爪がこわかった。

 

しばらくして別の落ち着いた場所に僕はいる。

 

木でできた、猫、もしくは子供の顔の置物(?)がおいてある。よくみると先ほどくりぬかれた目のように左目がきれいになかった。

 

あまりにも綺麗に抜かれているので、それを「しっくりする」となぜか感じた。

 

片目がちょうどいいということなのか? ご先祖様(?)伊達政宗?彼も右目がなかった。

 

何かに征服されて、なにをしてもどうしようもならない、やるせない気がした。

 

考えてみれば、この黒猫が庭にいたところで何の問題もない。 自分の飼い猫が襲われたのは悔しいが、僕が抵抗をしようとした、もしくは飼い猫に抵抗させようと指図を心の中でしたからかもしれない。

 

なにもしなければ、何も問題ないのではないか。

 

はたしてこの黒猫はだれなのか?なんなのか? 

 

女性のような気もする。 

 

家族の一員ではないとは思える。

いや従姉妹かもしれない。

 

自分であろうか?

 

とてもリアルだったので不思議に思う。

 

 

Happiness: 4

Reality: 7

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