水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

魔力が効いた

僕の魔法じゃないよ

Artwork by Satoshi Dáte

僕は今はもうない大きな三鷹の家にいた。白い枠のガラス戸から光りが綺麗に食卓にふりそそいでいる。僕はストーブの近くに体育座りで座っていて、やや45度斜めに外を見ている。

「彼女」が帰ってきた、家にいることを悟る。それは静かな喜びで、当然のようにも思えた。僕は彼女が起きていること(話が出来る状態)であることを望んでいたが、同時に彼女が寝ていることを知っていた。 背後に家族の一員の気配を感じたが。みんな2階で寝ていることに気づいた。

 

僕は「彼女」いったいどこに寝ているか見当がつかなかった。母の部屋は乱雑として、ただの寝る部屋になっている。薄暗く布団だけがある。周りにはごちゃごちゃと本なりなんなりとなだれのように置いてある。 僕はそっちにいるかとおもったが、どうやら父か、もしくは母か兄が二人で寝てるようだった。

 

いまは夕方を越えたような夜だった。

 

僕は父の部屋に行く。そこにはいつもの通り、二つのベッドがあり、母のベッドは手前に、奥は父のベッドがある。母のベッドは誰も使っていない、ただ無造作に服が重なっている。

 

なぜ母がここに寝ないのか僕には理解できなかった。 

奥の父のベッドに後ろの頭をみせるように「彼女」が横になっていた。

 

僕はすこし恐怖をも感じながら、「彼女」のほうへと向う。 「彼女」は気付き僕の方をみる。 当然のごとく迎えるが、いつものように隔たりや拒否感を感じない。僕はすべるように母のベッドに登り、体を前に倒すように、足はまげて、両手はベッドにつかせバランスをとっていた。

 

彼女は何か言っていたが、僕が来ることを予想していたようだ。

彼女の承諾も得ずに僕は彼女の布団の中に潜り込む。

 

いつのまにか僕は彼女の右手を僕の右手で掴んでいた。

二人の間にこみ上げる、わき上げる幸せと、宇宙的なものを感じる。

 

彼女は笑顔で普段とはちがう穏やかな印象だ。 いつもの軽やかな声が聞こえてくる。

 

「魔術が効くなんておもってもいなかったね」 彼女は今まで僕らの間に何も無かったかのように軽い声で、同時に重力のある声で僕だけに言った。

 

「僕の魔法じゃないよ、誰かがしたんだ」

「彼女」は超常現象的なものをひどく恐がる。だから僕にそういう力が無いことを示そうとした頑張った。

 

お互いが会うという予言がこの前の日にいろんな人に言われてたようだ。

 

「もうそろそろだろ?」

とか昨日いわれたよ。と最近手相をみてくれた男性に言われたのを思い出す。

彼女もまた多くの人に自分達が会うことを予言されたようだ。

 

それもすべて昨日のことだ。

 

僕はドアを閉めずにこの部屋に入った。どうせ誰も来ないだろうということと、閉めることで彼女が不快に思うかと感じたからだ。

 

そうしたらよりによって、母親が現われた。

僕らはお構い無しに手をつないで見つめ合っていた。

 

普段の彼女なら恥ずかしがって手を引っ込めるだろう。でも彼女は手を握ったままで安心していた。

 

母は間違いなく僕と「彼女」がいることをしっているのに、僕が寒くならないようにと薄手の透明な布帛シートを頭にかぶした。そしてまたおもーいムーミンの物語に出てきそうな形の真ん中に一本の縫い目がある帽子をかぶせた。豚革のようなキャンバスのような(自分で作った帽子に似てる)濃い灰色の帽子だった。

 

僕はうっとおしく感じ、また母になにも気遣いが無いのに苛立ち、帽子をとりはらって、ベッドの右下に放った。

 

母は 「なんでよ」というような、かるい不機嫌を表す。

 

ほんの少し母とやり取りをしていると。

 

「彼女」は正座をしてぼくを見つめている。

 

その目はほんの少し怒っているようで、僕が母にとった態度が気に食わなかったようだ。

 

現実には母と彼女は仲がよいところまでいかなかった。お互い似た部分があるせいか、二人で仲良く話すという事はまだ実現していない。

 

残念なことに僕は家の物音で起きてしまった。続きを見ようと思ったがそれは出来なかった。

 

深い繋がりとはなんなのだろうか、僕は昨日VRの素晴らしさを語るブラジル人に会った。世界中の人間がVRをもってReady player oneのような世界になると。ビジネスチャンスといった。

ビジネスチャンスとはなんだろうか、なぜ架空の僕らが「同意」してできたお金に固執するのだろうか、そのためにまた虚の世界を作るのだろうか?

 

彼はまだこの「深い結び」というものを感じた事がないのだろうと確信する。 その結びと言うものはみながかたる、形があるもの、お金も、地位も、名誉も、敬意も、結婚も愛をも超越する何かを感じる。そこには絶対あり、常に動き留まることができない不安定な電子波では再現など到底出来ないのだ。

 

いまそこにあるものが現実であり真実であり、人間が作り出した虚偽のものなど私たちが感じることのできる巨大な超宇宙には到底勝ち得ることなんて出来ないのだ。

 

僕は表現の使用のない喜びと感謝と幸せを今日感じた。

 

人はそれだけのために生きていいと思う。

 

そこに真実があり、僕らの使命はそこにある。

 

Happiness: 8

Reality: 7

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