血ははたして吸うものなのか?
UKロックおたくの女性の部屋に入る。
僕は部屋に入ると、周りをキョロキョロ見ながら、ちょこんと床に座る。 そしてすすっと猫ちゃんが登場する。 猫はそのとき好きでなかったので、現れても特に感想は無し。
まさか、いきなり訪問したひとの女性の部屋に入るなんてことを考えてもいなかったから、ドギマギした。
彼女は昔の音楽が詳しかった。 僕が好きな音楽の話をしても、
「あんなのただのOOの真似でしょ」
とか言ってけなされた。 結構口が悪かった。
音楽が好きだから、こういうのも読めるとイギリスの音楽雑誌を見せてくれた。
なんでも感動してしまう若い僕は
ほぇー 英語が読めるんだ!と思った。(その時学校で英語を勉強してるのはなんだったのか)
イギリスにも時々Liveを見に行くらしい。
(ライブを見に行くだけでイギリスまで行くのか...すごいな...)と思った。
「先生!弟子にして下さい」
とはいってないけど、あまりにも上から目線で話をされ、いろいろとロックに詳しかったので、
「へい。 へい。」という感じで話を聞いた。
猫がベランダにすすっと出かける、ベランダと言うか物干しがある狭い場所。
彼女が僕に背を向け、四つん這いになって、猫に部屋に入る様によびかける。
女性とこんな近距離でお目にかかったことがなかったため、恥ずかしくて僕は目をそらした。
猫はシュシュっと家にもどりその弾みで女性の上腕にひっかき傷をつける。
血がすぅっとにじみ出る。
「いた!」 といって彼女はその血を大きな口を開けて吸い始める。
僕は「大丈夫ですか」もいわず、どうしたらいいかわからず、ただ嫌そうな顔をして見つめ、そのどうしようもない気持ちと隙間を埋めようと別の話題をふった。
彼女は自分の血を吸いながら、こちらをみて「ん?」というような表情をする。
80年代の音楽の話になり、David Bowieについてなにもわかってない僕は、
「Fameを聴いた時、なんだこの曲とか思いました」
と言ってしまう。
彼女は無言で訴える。
Fame.いまとても好きです...
この曲80年代だと思ったら70年代なんですね...時代を超えている。
そして彼が生きている間に会いたかったです。