水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

天才なんていない

僕を天才呼ばわりする天才

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Artwork by Satoshi Dáte

別のある日。 

Evaと彼の部屋には別の固定電話がひいてあった。彼らはいつも外に出てる。そしてその固定電話が鳴り響くのである。 

 

 

韓国語で韓国人の男性がなにかDo-yunに語り掛けてる。どうやら相手はすごく憤慨しているようだ。日本語とよく似ている音だったので何を言ってるのか予想がついた。

受話器の向こうには彼がいるのである。

 

「Do-yun!」

 

そこにいるのはわかってるんだぞ!と間違いなく言ってるようだった。

『Doooo-YUN!』

 

 

一度たまりかねて電話に出てしまったことがある。

「Do-yunいる?」と受話器の向こう。

 

僕が

「いま、いないみたいです。」

 

というと。

 

「そうなの?」

と本当に驚いている様だった。彼が居留守をしてないことを伝えたかった。

 

こんなことがよくあるので、てきぱきした印象はあまりなかった。

 

彼の韓国人の友達は感じの良い人たちばかりだった。少年っぽい男の人が家に一度やってきた。 女性の話になって。

 

「韓国人の女性は恐いから絶対付き合わないほうがいいよ」

 

と言われて、そうなのか? 綺麗な人が多そうだけど。と思った。

 

前のエピソードでフランス人と東京で知り合った話をしたことを覚えているでしょうか?東京の地下街で彼と歩いていた時、急に彼は

「あそこで歩いている女性は韓国人だよ」

 

と指をさした。まさか。日本人でしょ?と思ったら。 その女性二人が前を通り、韓国語らしき言葉で話していたのを耳にしてびっくりした。 細身でエギゾチックな容姿の人達だった。 韓国人女性なんてその二人以外見たことがなかった。

 

正直韓国が何なのか理解していなかった。 もちろん学校で勉強したけど西洋に目が向きすぎていて無頓着であった。ボストンで会った沢山の韓国人が、韓国という国の印象を僕の頭の中に作り上げていく。

 

さて彼らとは裏腹にもう一人随分態度のでかい背の高いDo-yunの友達が現れる。

 

「おれはドラマーだ」

 

文句あるかとでもいうように、椅子にドスンと座り、足を大きく広げてポケットに手を突っ込んで僕に言葉を放つ。

 

最初から敵対姿勢である。

 

彼とDo-yun達と家から30m先にあるビリヤード場に行ったこともある。 彼はとてもビリヤードがうまかった。顔がぼくの親友にそっくりで。 韓国人はみんな日本人に似てるなぁと思った。

 

日本人に会わない。 日本ではジャズが盛んなので、ボストンやニューヨークに行かなくても東京で勉強ができるようだ。 そんなこともあまり知らなかった。 

 

Do-yunとは意外なところで繋がりを感じた。 これは今でも誰とも共有できない僕らの「くせ」である。

 

何かと言えば。

 

夜中大声で叫ぶのである。

 

叫ぶというか、Screamにちかい。

 

起きてて叫ぶのではなくて、寝ててである。

 

「無意識に叫ぶ」のだ。

 

 しかも僕は寝てて気付かないときが殆どである。 僕は中学くらいからずっとこの調子である。ボストンにきて、イギリス留学から少なくなっているがいまだに叫ぶ。

 

そして周りの人は謎の叫びに戸惑う。

 

そんなことで、僕と彼は意気投合したのである。

 

「天才は夜叫ぶのさ」

 

と彼は僕に言う。

 

なるほど。と勝手に納得したが。僕は天才になる可能性があるのかもしれないと勝手に天才Do-yunからお言葉を頂いた。

 

残念なことにこの天才の「音」(叫ぶ音でなく彼のピアノ)を聴くことは一度もできなかった。

 

ぼくはでも才能や天才なんてものは存在しないと思っている。全ては努力であると思う。がむしゃらに努力してもしょうがないけれど。 生まれ持った才なんてものは1%もないと僕は思っている。