水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

卒業できない悪夢/美術部回想④ – イギリス留学<準備編>

進学校ではあったけど、聖域があったので楽しかった。 

f:id:SatoshiDate:20190408214618j:plain

イギリス留学の準備中に中学の先輩が電話してきた。 彼は変わった人で、中学の時にお世話になったが、卒業した後に二度と会わないだろうとは思っていた。

彼が意外な人を紹介してくれることになる。

 

名前は辻先輩。 美術部の部長だった。 ナックルで仲が良かった下田先輩を殴り、不良の道へ進んでいった。 

 

彼の弟が不良であったための影響だろうか。

 

ナックルで殴られた下田先輩は酷い傷ではなかったようだ。(と記憶する)

 

ある日、セキュリティーの甘いうちの学校に辻先輩の弟がのりこんできた。

 

下田先輩は何も辻先輩にしていないのに、活をいれられるのであった。

 

美術室がどこにあるかどうやって知ったのか謎で、しかも下田先輩が美術部にいることもなぜ知っていたのか謎だけど。

 

ドラマや映画で見るようなシーンを見させて頂いた。

僕らがあいかわらず、くだらない話をしていた時に彼は部屋に入ってきた。

 

「おまえが下田か。 俺の兄貴に舐めたまねしてくれたな」

 

基本的には何もしてない。

 

「はい、すみません。」

と弱気になる下田先輩。

 

「調子こくんじゃねーぞ。」

とばしっとなぐる辻先輩の弟。

 

下田先輩の眼鏡が吹っ飛ぶ。

 

そして弟は満足げにして去るのであった。

 

シチュエーションがあまりにも面白くて、唖然とした。 そのときいらいらを抑えられなかった幼い僕は、勝手に部外者が入ってきたことに、怒りがこみあげて、なにか言おうとしてしまった。

 

が部員の数名に止められ何も言わなかった。

 

後に辻先輩は学校に現れ、父親も現れ、廊下で叱られているところをみた。 彼は泣き顔で

 

「ちくしょー」

 

と言って、僕をちらっと横目で見たのを覚えている。

 

その後彼は先生に連れられて、皆に「ごめんなさい」をしたのだった。

 

そのあと僕は部長となり。 夏に合宿の手配をしたり、まとめ役ができるともおもわなかったけど、何とかこなしていった。

 

僕は学校を卒業した。

 

卒業できるとは思っていなかった。

 

勉強はおそろしくできなかったし、やるきがなかった。

 

ただ音楽と美術の興味は絶大だった。

 

どうしてやりたくないことをしなくてはいけないのか僕には理解ができなかった。

いまでも僕は卒業をできない悪夢を時々見る。

 

辻先輩からはずっと音沙汰がなかった。

 

そこに急に電話がかかってきたのだ。

 

「今映画を撮っていてさ、集まりがあるから来ないか? お前面白いし、俺の友達も紹介したい。」

 

と昔のまんまの口調で僕を誘ってきた。

 

ぼくは石神井駅の近くにある、築100年くらいの木造アパートに訪問することになった。