水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

プーさんとクラシック音楽 – イギリス留学<準備編>

プーさんはイギリス出身。 

f:id:SatoshiDate:20190411042725j:plain

美術部の先輩の友達、藤井さんとは仲良くなった。

イギリスに留学する前に、彼との交流が増えた。

ファッションの学校に行くけれど、僕はミシンを使ったことも手縫いをしたこともなかった。ファッション自体もよく分かっていない。彼は家に僕を招待してくれた。彼の家でミシンの使い方を教えてくれると言った。

 

彼の実家は武蔵野美術大学の近くにある家だった。

 

彼のお母さんは再婚していて。日本フィルオーケストラのバイオリンのトップの人だった。

 

お父さんのリスニングルームを僕らはつかった。

 

リスニングルームと言ったのは、CDやレコードしかその部屋にはなかったからだ。

 

でもCDレコード以外のものがぽつぽつと間にいる。

 

そこにはプーさんのぬいぐるみがあった。

 

プーさんと音楽たちがうねりにうねり、天井まで伸びる。その部屋の印象は塔の中身の様で天井がないような気がしたくらいだった。 

 

家庭用ミシンを藤井さんは持って来てくれた。 彼は丁寧に縫い方教えてくれる。

 

両親に会う。

 

お父さんにうちの母親の事をはなしたら、同じ音大だった。

 

そこで彼は興奮して、卒業生名簿を取り出してきて、えーと、伊達さん、伊達さんと言って調べ始める。

 

お母さんは「やめなさいよ、あなたと世代が違うはずよ。」という。

 

新しいお父さんはとても若いようだ。

 

そしたらお母さんの方が

 

手を当てて、僕の顔をじっと見つめる

 

「伊達さん?」

 

「もしかしてヴィオラの伊達さん?」

と驚いたようにゆっくりと言う。

 

「私もヴィオラなんだけど、若い時同じオーケストラで働いてたかも」

 

そんな偶然があるだろうか。

 

僕はあまり信じていなかったけど、家に帰って母に聞いたら、彼女は覚えていた。

 

「私が一緒に演奏した時は、すでにお腹に赤ちゃんがいたようだったけど」

と母は言った。

 

藤井さんが僕の家に来た時に母はびっくりして喜んでいた。

 

お母さんにそっくりだと感動したのだった。

 

彼にファッション業界の事をきいた、知り合いで働いている人は会社ではデザインをしていない。 コピーばかりしてつまらない仕事だと、彼は言っていた。

 

イギリスは違うかもしれないねとフォローはしてくれた。

 

でもぼくは企業で働くことを考えてはいなかった。

 

僕はそんなもんかと思った。 べつのそこで諦める気にはならなかった。

 

辻先輩の横に常にいた彼。 学校が違ったからあったことはなかった。

 

卒業した後に藤井さんと仲良くなり、実は母親の知り合いの息子だったというのもとても不思議な偶然だった。

 

 

恋愛の話などしたり、将来の話などしたりした。

 

そうだ、かれは写真をやっていた。 一度展示会に行った記憶がある。

 

何回かその後会ったけれど、イギリスに来てからもう連絡は取っていない。

 

名前すら忘れてしまった。

 

でも素敵な出会いだった。 同性で意気投合することもあまりなかったから。もちろん異性とも。

 

一つの偶然は点となり二つの偶然は線となり三つの偶然は面となり、四つの偶然は空間となり、五つ目で僕たちの必然を作り出し、人生を動かしてくれる。