舞台に立つこと
母と演奏家のおばさま達が集う会であった。 小さい頃からこういうところは苦手である。
何を喋ったらいいかわからないし、しゃきっとしてないといけないので。ただただ時間が過ぎるのを待つのだ。
招待しくれた、ヒガシさんの息子さんは二人とも海外で生活している。
アメリカに居る息子はスペイン系イギリス人の女性と、イギリスに居る息子はイタリア系イギリス人と結婚してる。
なんだか絵にかいたような、運命が決まっていたかのような不思議な家族形態。
はたして、僕もイギリスに住んだらイタリア系なり、フランス系のイギリス人と結婚なんかしちゃったりするものだろうか?と思った。
日本人男性は西洋人の女性に相手にされないのではなかったのではなかろうか?
ヒガシさんのダイニングキッチンにはたくさん、西洋の便利な器具が置いてあった。 いろいろとデモンストレーションしてくれて、そのたびにおばさまたちが、感動しているのであった。
ヒガシさんにロンドンにいる息子の連絡先を教えてくれた。
今度下見に行く予定を立てたから、その時会えると思った。
ヒガシさんは、とても優秀なチェロ奏者らしい。
しかし、彼は生で演奏するとき、あまりの緊張で練習の時の演奏ができないらしい。
「本番ではある程度の緊張がないとだめ」
と良く母が言っていたが、
あがり症のぼくはそんな緊張をコントロールできるものなのか?
と不思議に思う。
ぼくもヒガシさんと同じで、結局は舞台に立てない人間なのかもしれない。
これからイギリスに行くけれど、なにか自分の問題を抱えているのを見ないふりをして、自分の体をイギリスに放り投げようとしているような気もした。