一つの偶然は点となり二つの偶然は線となり
学校の先輩から電話が来た。 辻先輩だ。
「元気か?」
彼は背が低い。ぼくも低いが僕より低い。
彼は台湾人と日本人の混血。
中学の時の美術部の先輩だ。
僕は中学2年までテニス部だった。 週3日と書いてあったのに、なぜか毎日練習しなくてはいけなかった。 勉強する暇もなければ絵を描く暇もなかった。
テニスは楽しかったが、雰囲気はよくなかった。 常にだれかを馬鹿にしようとする人ばかりで、不必要にコーチも厳しく、何のためにテニスをやっているのかわからなかった。
勝つため
苦しみを感じるため
みたいなスポコンな感じばかりだった。
練習の時に壁の影に隠れていると先輩に怒られた。 ときどき水も飲んではいけなかった。
だけど帽子は日光に良くないから被れと言う。 よくわからない。
高校の先輩は感じが良かったが、世代が変わるとまた感じが悪くなる。
そして偉そうにしていたひとたちが、世代が変わると、コピーしたかのように偉そうになる。 全然偉そうじゃなかったのに。
どこかの国の独裁者家族みたいである。
とても滑稽である。
なので僕は楽しくないスポーツをしても無意味と感じ、やめて美術部にした。
美術部に入った瞬間ぼくは、肩の荷がおりた。
テニス部で気の合う連中と一緒に入部した。 そこにはとてもオタクっぽい人しかいなかったが、特に気にしなかった。 3人同時に入ったので美術部の先輩は大喜びしていた。
これから学校に行きながら、絵がずっと描けるなんて嬉しいな。
と思った。