新しい人生のレール
日本の大学にいかないと決めた瞬間。ぼくは地面からすこし足が浮いている感じがした。スーパーパワーをもった仙人になった感覚とは違い、なにか不安で、ひかれて入れたレールを日本人のおじさんたちが、「あ、こっちこないんですか、じゃあどかしましょうね」とたんたんと、すこし馬鹿にしたような声で、よいしょとどかされた感じである。
このイメージにはいつもアメリカの荒野がみえる。そして遠くに木のない山が見えるのだ。 そしてそれはコンピューターゲームのようにただの景色で、いつまでもその山や遠くに見える何かにたどり着くことは決してないのだ。
日本人レールはどかされた。だから日本に帰って就職もできないかもしれない。
僕は留学を決めた時点で、新しい光をみつけた。それと同時に、周りにあった床や、壁、建物や人が消え去った。
でもこれはただの幻想に過ぎなかったのかもしれない。
まわりに何か守ってくれるものがあると、自らヴァーチャルリアリティーのような偽の世界を創っていただけで。光が見えたとたんそれが現実でないことがわかったのかもしれない。
そもそも「本当の現実」というものは、しっかりとイメージできるものではないのではないか。
と思い始めた。
僕は12月の寒い時期に、イギリスにしたみに行くことにした。 これで2回目の海外一人旅行だ。 一度ボストンに行ったし。そんな大変ではないだろう。
飛行機に乗った記憶はほとんどない。
記憶がはっきりあるのはヒースロー空港の駅で地下鉄を見たときに。
なんだこのPOPな彩は!
赤と白と青のかわいいちっちゃいおもちゃみたいな地下鉄の列車が現れた。
「このお出迎えは!!」
ふざけてるのかな? 僕を笑わせようとしてるのかな?
それとも新しい人生のレールに乗ろうとしたから、びっくりさせようとしたのかな?
なんて本気で思った。
「日本でこれをデザインしたら、みんなに怒られそうだな...」
と思った。
なんかそれですこしワクワクした。