水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

ニューヨークへ出発

無言で出る

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あれ?こんなかんじだったかな?

出発は朝早かった。 皆はまだ寝てる、薄暗いキッチンで僕は仕度をする。ヒロシさんは何も言わなかった。 僕が皆にさようならを言わないことに。もうここに帰ってることはないかもしれない。 寂しい気持ちになった。 僕はバスでニューヨークに行くことにした。 安いしそれが一番楽だとのこと。

バスステーションにヒロシさんと行く。 そこには老夫婦がいた。 おばあさんが自分の旦那さんを紹介してきた。 

 

「私はここにチケットを持っている、夫は目が悪いのでニューヨークまで連れて行ってくれればこのチケットを安くあげれる」 

といつも同じことをしてるかの様に言ってきた。

 

僕はおばあさんの言ったことに承諾してチケットを買った。 ヒロシさんがチケットを確認すると

 

「ぼったくられたな、もっと安くしてもらってもよかったんじゃないか」 

 

と言った。 というのはチケットはもっと安かったっぽいのだ。 まあ僕は何でもいいと思った。安く行けるから。 いったいこの盲目の人に何をしたらいいのかよくわからなかったが、とりあえず着くまで一緒にいればいいということだった。 

 

この男性はニューヨークに行って一体何をするのだろう? 一人で歩いていけるのだろうか?世界の誰もが知っているニューヨークという街に今から行くので、そんなに大都会に一人でポツンとさせて大丈夫なのか? まあきっと誰か迎えに来る人がいるのかもしれない。 

 

僕はひろしさんとお別れを告げ、バスに乗る。

 

両親によろしくなと言われる。

 

そううちの父親が彼に手紙を書いたことがあった。 あまりにも丁寧だったのでひろしさんは頭を抱えて、一体何と返事をしたらいいかわからないなぁ。 と言っていたのを覚えている

「It’s sooo formal」 すごく丁寧なんだ。

とフラットメイトにいつもの笑顔で口を開いたまま話した。

 

バスの窓から僕はヒロシさんに手を振った。

 

彼も自分の弟に手を振るかの様に僕に手を振る。

 

その時が初めて、ヒロシさんから温かいものを感じた。

 

もしかしたら彼も僕と会えなくなって寂しいのかもしれない。 その時彼に初めて感謝の気持ちと寂しい気持ちが込み上げてきた。

 

初めての海外生活で、僕がこんなにたくさんの事が僕の人生に飛び込んでくると思わなかった。これも彼が快く僕を受け入れてくれたからだった。

 

こんな若造にそんなことを思うのだろうか?

 

彼が言ってくれたように、未来の僕は大物になるのだろうか?

 

お前は大物になるなんて、いろんな人に言われるなんて滅多にない(と思う。)

 

それを実現しなければいけない。 諦めてはいけない。

 

 

バスはぐるぐると大きなバス専用の通路走っていく。 まるで夢の中にいるような、不思議な通路だ。 外に直結していてすぐに高速道路に繋がった。 よくできているなぁと思う。全く未知の世界のアメリカで何か近未来的な SF 映画の中にいるような気がした。 

 

高速でバスは飛ばす。 もちろん高速に乗る。ボストンとニューヨークは都会なのだから、よくあるアメリカのロードムービーみたいな感じではないだろうなと思った

 

ニューヨークにはすぐ着いた。 問題はついた後。 ついて興奮の嵐だったけど、一向に進まないである。 あの有名な Yellow Cab(黄色のタクシー)しか通りにない。 タクシーは何百台も周りに敷き詰めている。 タクシーの意味があるのだろうか。 歩いたほうが早い。 

 

ニューヨークにある仕事はタクシー業界しかないような気がした。 このイエローキャブさえなくなれば交通渋滞もないのではないかと思った。 バスはノロノロと進み続け、カタツムリよりも遅い。 僕はもう完全にニューヨークを見るのを飽きてしまった。 予定時刻より早く着くと思ったら、渋滞を予想してか、予定のちょうどに着く。

 

やっとのことでついた。 盲目のおじいさんはその後どうなったかははっきり言って記憶が飛んでいる。誰かが迎えに来たような気もする。 ぽつんとしていたような気もした。 僕はちゃんと誰か来るのを待っていたかもしれない。 

 

さて僕はホステルの住所を見ながら歩いた。 そんなに遠くなかったこの時はまだ京都にも行ったことなかったけど、京都のように非常に分かりやすくグリッドで来た街。 番号順に並んでるから簡単に目的地にたどり着けると、少し余裕だった。 ところが僕の書いてあった住所にはとんでもない間違いがあった。