不安は病気に繋がる
唇にできたヘルペスはすこしずつだけれど次第に大きくなっていった。
丘を登って、また下ってやっとのことで着く家から、学校が終わったすぐあとに、GP、所謂General Practice、日本で言う町医者のところに行く。
口のヘルペスなど僕は一度もできたことがなかったけれど、ヘルペスだと思われ、薬の名前を書いてもらい、薬屋にいって薬を出してもらう。
人間というものは単純で薬をもらったり、医者に「これで大丈夫」と言われるとその気になって安心するものである。
とりあえず今まで生きてきた中で、「大丈夫」といわれて大丈夫でなかったことはなかったので信用した。
ところが、そこにあるヘルペスは少しずつだが大きくなっていった。
気持ちの悪い話でもうしわけないけれど、何かの弾みでヘルペスをぶつけたり、いや、なにもしなくても、まるで「ジョジョの奇妙な冒険」で出てくる腫瘍のような音を立てて(たててなかったかもだけれど)、液体と共に少し成長する。
クラスの皆は心配したが、薬で治るものだと思っていた。
心配したので、また医者に行くと、そこにいた女医さんが
「これはグラニュローマ <English:granuloma>ね」と言われる。
(気持ち悪いと思うので検索しないほうがいいです。)
「焼いてしまえばいいんだけど、ちょっと待っててね」
と彼女は奥のほうでごそごそとし始める。
それにしても歯医者といい、医者といい、外からみると普通の家である。
しかも中にはいっても普通の家にしか見えない。そしてすこし通常より大きな形状をしている白い女性の医者は、がっかりそうに帰って来る。
「実はいまここの担当医がみんな休日でね、器具がどこにあるかわからないわ。帰ってくるまで待ってくれる?」と言われた。
そうなのか。
「いつ戻るんですか?」
「一週間半くらいかな」
と適当に言われる。
わたしはここに本来いるはずの医者が戻るまで待つことにした。
面倒なことにこれからなるとは知らずに。