水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

殴られて10針縫って大切な物を盗まれる①

ガラスが割れると不吉なことが起きる

12月某日。

キッチンの戸棚から何かをとりだそうとして、こんなところに置いていたら落として割るだろうと信じていた、1L以上のオリーブオイルが見事にたおれ、床がタイルのために木っ端みじんに割れた。

 

こういうときってショックで一体なにが起きたかわからないものだ。 

 

1秒くらいぼーっとして現状をみつめるのだ。

 

両手が塞がっていたのでなにもできなかった。片手があいていたら割れる前にパッと掴むか、手をクッションにして割れるのを防いでいただろう。 そういうとっさな判断はできるけれど、なぜか

 

何かが爆発したり、予想外の事が起きると人は固まる。

 

もったいないことをしたという事と片づけるのに大変で、なんとも残念に思った。

 

ところがこれは全ての前兆で。 これから起こる出来事のパターンが一緒だった。

 

その都度、絶対に何かが起きることがわかっていた。

 

  • いやな予感がした
  • ぼーっとして油断をしてる
  • 危ないのにそれを強行する
  • 何かが起きてショックで固まってしまう

 

これは僕がいままでの事故や怪我などしたときと同じだ。

 

それから数日後友人がパフォーマンスしているMarina Abramovicのショーをロンドンで長い付き合いの友達と観に行く

 

感想はとばして、見終わった後に一緒に会場にいった友達とカフェに行く。

 

カフェを探そうとしている時点で何かしら嫌な気がした。

 

人が多く集まる場所は久しぶりである。

 

ロンドンでも未だに男性と女性トイレが分かれていることに少々不快に思い(男性トイレに行くのが嫌である。共同トイレにすればよい)。僕は友人におもしろおかしく文句を言う。

 

次の場所に二人で行くかどうかすぐに決めなくてはいけなかった。

 

最初に訪れたカフェは感じが良さそうだったが、10人も座れなそうで、5人ほど外で並んでいた。 僕は並んでもよかったが、友人は別のところに行きたいといった。

 

しょうがなくもう一つのカフェに行くが、そこは恐ろしく混んでいて、忙しそうだった。

 

席が多かったから、

 

「しばらく待ったら誰か席を立つだろう」

と友達に疲れ気味に言った数分後に誰かが立つ。

 

あまりにも忙しいカフェで、人が立ったりすわったりと、慌ただしかった。そしてとっても素敵なカフェ。でもなかった。

 

また

「いやな予感」

がした

 

僕は二人で同時にオーダーをとりにいこうとした。

 

重いアーミーバッグ(リュック)そのままその椅子にどんと置いた。

 

少し不安ではあったが、

 

「こんなでかい物は誰も盗まないだろう」

 

と信じ込んですぐに戻ると思ってほおっておいた。

 

2か月も日本に戻っていたせいか、そこまで注意も払わなかった。

 

食べ物も頼んで、席に戻る。

 

僕のリュックはあった。

 

カフェの作りが縦長の構造なので、なにか盗んでも結局僕とはちあうことになる。

なので盗むことは容易ではない。

 

リュックを床におろす。 ふだんは椅子にかけるのだけれど、ストラップが弱くなるのと、立ち上がる時に注意しないと重いリュックが後ろに倒れて人に迷惑をかけると思ったので。

 

綺麗な床にカバンをおろしてしまう。

 

「ロンドンもこんなにきれいになって東京みたいでつまらないな」と友人に語る。

 

僕らはそこに1時間くらいいただろうか。

 

少し心配になり僕の右横に、ほぼ触れているリュックの中身からなにかをとる。カバンのさらに奥には壁がある。

 

後ろ斜めに誰かが立ってる気がしたが、多少気になったが、特に僕は警戒しなかった。

 

友人がお手洗いに行ったときに、自分のリュックがなくなっていることに気付く。

 

またオリーブオイルを割ったときのように、一瞬固まる。

 

そしてうんとまえに何かを盗まれたとき、何かを無くしたときのように動揺した。

 

立ち上がり、後ろをみて、周りを見る。

 

続く>