嫌がられて気に入られる
今回9月に展示したギャラリーの近くにある本屋さんに行く。 がらりとドアを開けて、 DM を置いてもらおうと頼んだ。
「知り合いでない方のものは置けない」
と断られた。
「ご近所さんでも無理なんだ」
と心の中で残念に思う。
本棚に置いてあった作品の一つが店内に入るときに目に入り、その本が美術予備校の時に教わった先生の本だったことに気付く。
そこで店長に
「この作家さん知ってますか?」
と切り出す。
「 T さんですね、 昨日来てましたよ」
「彼は天才ですね。とても尊敬してます」
と思いもよらない言葉が彼から発せられる。
そして、ぼくもその先生がただの知人ではなかったので、彼についての話で盛り上がった。
結局
「それを先に言ってくださいよ」
と言われ、僕のDM を置いてもらうことになった。
その僕の先生である写真作家はとてもアーティスティックなのに、 安定を重視してる人だった。 予備校の先生をやめた後は教員の免許を取って高校の美術教師になったらしい。
予備校では二人でユーリ・ノルシュテインの話をいつもしていた。 彼が在籍した東京芸大のデザイン科である教授がノルシュテインのアニメをみせたらしいが、彼以外の生徒はその作品の良さが理解できなかったらしい。
彼の写真の作品は死をテーマにしている。自分の親がが亡くなっていくところ、義理の親が亡くなっていくところを撮っていったものが、その本屋に置いてあった作品集だった。