同胞と会合
漠然とした不安は与えられる未来の選択肢が少ないから。未来は与えるものではなくて、築き上げるもの。受験失敗後、予備校でトップだった女性と留学の話を一緒に話し始める。
タイ人と会ったり、公園で絵を描いているときに
予備校で一緒だった、佐野さんとまた会うことになる。
そのいきさつ>
クラスが一緒だったとき話は殆どしなかった。
でも予備校を出たとたんに、殆ど話したことがない同じクラスの女性と、束縛から脱出できたかのように話し始めるのは面白い。
また彼女にはなんの興味もなかったのに、同じ目標が出来て以前と違う女性にも見えてきた。
佐野さんはすでにイギリスに行ったことがあった。フランスにも行ってグーチョキパン店を探し歩いたようだ。(魔女の宅急便)
イギリスでは開かない扉をジェントルマンがあけてくれたりと親切だった、駅の間隔が近いから歩いて中心をまわれたなどと話をしてくれた。
彼女もまたファッションに興味があった。 そんな感じは予備校では一切なかったのに。 日本の大学にはファッション科がないので、選択から頭の中ら削除されるのかもしれない。僕も人の事は言えないがどの専攻でいくかも迷っていた。 しかし大学で専攻して入学したらその道しか行けないのはずいぶんと恐い。
そんなことはないよと言ってくれる大人はいなかった。
もし違うコースにいったら大学4年を無駄にしてしまうのだ。
彼女は予備校のクラスではトップで、一度デッサン、平面、立体構成と全てにおいて最高得点を取った人だった。
でも彼女は行きたかった芸大には通らなかった。
大学に落ちたら、
- 浪人する。
- 第二志望校に行く
- 専門学校に行く
- 留学する
- 美術を諦める
のどれかに絞られる。
それで僕らは留学組だったのだ。
イメージしたら、沢山の道はあるけど全ては一直線
その道を外れたらどうするか。それについて語ってくれる先生や大人はいなかった。
「それは...そん時考えたらいいのではないかな?」と無責任な事を言うか。
「それは...人生の終わりだね。」というのか。
「それは考えちゃダメ」 というのか。
もしかしたら励ましてくれるような本や人は存在したかもしれないけど。とりあえず僕の耳には届かなかった。あるのは漠然とした将来の恐怖だけ。
でもそれもだんだんと消えていったのでした。