水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

声を出ないボーカリスト

シャイすぎて声が出ない

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生まれて初めて人前で歌うことになる。

嫌、歌おうとしたことがあるが、ちゃんと最初から最後まで相手に聞えるように歌ったのは初めてである。

 

 

ここで昔のエピソードを話す。

 

僕は中学の時に初めてバンドを組んだ。

俺はボーカルをやるんだと言って。ボーカルをやることになった。

 

中学生は、人前で歌うのも恥ずかしいのだろうか。ボーカルをやりたいという人もなかなかいなかった。 一番目立ってかっこいいと思うのに。 さすが日本人。

 

でもカラオケがうまい人は抜擢されていた。

 

人前で何かするのは嫌だ。

かっこいいことがしたいけど、前はいやだ、ということなのか?

 

ドラマとかギターとかベースとか、

一応なんかやってるような感じで、ステージでかっこつけたい時期なのかもしれない。

 

よくストイックであると僕はいわれる。

 

中学の時も音楽をやるなら、生涯音楽をずっとやる!

 

そう思っていた。その時にバンドを組んだメンバーは何人未だにRockしてるのだろうか?

 

本当に音楽をやりたくて、ロックスターになりたかったかもしれない。 でもいまや会社の仕事に追われてRockなんかしてる暇はない。

 

RockStar。このときU2の様に10万にの前で歌うようなバンドを作るなんて考えていたのは僕だけだったのか? 

 

一体何のために中学にバンドをやるのだろうか?

かっこつけるため? 男子校で? それとも自分がかっこいいと思いたいため?純粋に音楽をやりたいため? やりたいならオリジナルの曲を作ったらいい。いやカヴァーをしたいのだろうか? よくわからない。

 

それは運動部に入るようなものだろうか?

 

こんなこと言う人はまた面倒くさいと言うかもしれない。 引っ込み思案であったけれど、やるからには最後までやるという気持ちはあった。

 

僕らのバンドは曲も決まらずに、みんながあーだこーだ言ってこの曲をやろうとかなんとかわいわいやりだす。 

 

オリジナルの曲をやりたくてしょうがかった。でもそんなの誰も認めない。 学校の近くの綺麗なスタジオに行くことになる。 初めてのスタジオ入りだ。 何曲か練習する曲を決めて、楽譜たるものをながめる。 皆はスタジオでてんでんばらばらに演奏を勝手にしまくる。 

 

ギターのアンプから出る音というのも汚い。 一体どうやって調整したらいいかなんて、皆分からない。 ドラムをバシャバシャと子供の様に叩く。 素人感が非常に感じられる。

 

そこで僕は歌を歌おうとする。だがおもしろいことに。 いやこれはこの時は最高の恐怖だった。

 

声が出ない

 

大きい声出せない

 

でもぼそぼそ喋ると声が出る。

 

でもマイクを通らない。当たり前だ。

 

じゃあフレンチポップスを歌えばいい。と頭の中に言い訳を沢山つくりだす。

 

でもあれは一応歌ったりもしている。

 

Brigitte Fontaine - Comme à la radio 

www.youtube.com

 

CLÉMENTINE / JOHNNY GRIFFIN Un Après-Midi À Paris (Afternoon in Paris)

www.youtube.com

 

要するに僕は、メロディーがあって自分を表現するということは恥ずかしいのだろう。 マイクを持って思いっきり口を大きく開いて、くちぱくで僕は歌う。

 

そう大きな口さえ空ければ、歌ってるもしくは声が出ると思ったのだ。 

 

でも僕の肉体からはなにも出てこない。 かすれた霧のようなものが少しずつ、スローモーションでおばけの様に出てくるだけだ。 それすらメンバーには見えてこない。

 

これをビデオ撮っていたら、僕の声だけうまい具合にかき消されたような、そんな映像が撮れるだろう。

 

僕はその時いったい他のメンバーにどういった言い訳を言ったのかわからないが、1時間ほどのスタジオ代が無駄になったのである。 そして僕らは後日もう1回スタジオにバンドと一緒に入った。

 

練習を沢山して、家では声が出た。

 

だけどスタジオでは全く声が出ない

 

なんと中学の時に私はバンド解雇というロックの雑誌の最初のページに載りそうな、ドラマティックな出来事を生んでしまった。

 

影の薄い僕もそれだけで中学校中で有名になった。

 

「伊逹は声が出ないボーカリスト」

 

かっこよすぎます。

 

続く>