水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

はじめて人前で歌うには

はじめて人前で歌った日

f:id:SatoshiDate:20181102121506j:plain

人前で歌ったことなんてない。あっても合唱団でみんなで歌ったときか、カラオケ、聴こえないくらいの声でうたったことしかない。 「こいつはだめだ」と皆知ってる。 

でもぼくはボストンではじめてカフェで歌う事にする。

もちろん声が出ないのではなかろうか?と恐怖はあった。

 

またもやスーパーサイヤ人(ぷつんときれた)となり。

 

ぼくにとっては周りがどうこうはもうどうでもよかった。

 

日本人のミュージシャンの女の子から聞いた電話番号にかける。英語もろくにわからないのに電話して、何曜日の何時にきてくれといわれる。 

 

そこでサインをすればいいとのこと。 

 

100ドルギターをぼくは片手に初めてのコンサート?に向かう。

 

Kendall Caféにたどり着く。沢山の人がギターをかついでサインをしようとしてる。 緊張が高ぶってくる。 

 

カフェは暗く古い感じがする。多くのミュージシャンの写真があったが、有名な人がいるか確認する余裕なんてなかった。

 

僕はサインをしてスタッフに5番目と言われたので。それまで他の人の演奏を聴くことにする。だいたい10人か20人ぐらい歌うんだろうか。 ここのオープンマイクでは2曲ほど歌うことができる。 

 

スタッフの女性が、DATE(伊逹)はダテって読むの? ときかれて「Yes, Da Te」と答えた。 

 

デートと呼ばれずにすんだ。

 

1人目が1曲目を歌い始める。 僕は緊張の中でみんなの曲を聞く。どれもオリジナルの様だ。 とてもうまい。 日本じゃ考えられない。 

 

僕の番がいよいよきて、緊張のあまりあたりが3倍くらい暗く感じた。 余裕な表情を自分自身に見せ、笑みが苦笑いになってるのを感じる。

 

ステージにあがってしまう。 

 

「さて、こけてないし、忘れ物もないし、後は練習した歌を歌うだけだ。」

日本から来ましたと恥ずかしいことをマイクを通して語る…

 

2曲僕の暗い曲を続けて歌う

 

ふっきれた僕には、緊張なんかすぐ吹き飛んだ。

腰を掛け、マイクを調整してもらって。

左指をフレットに置く。人前で歌なんて歌ったことないから、顔をどちらに向けたらいいかわからない。

どうしたものかと思ったが。次のステップを考える。

 

歌詩の最初の文は覚えている。

 

マイクとの距離はこのくらいか。

 

目を空けて歌おうかどうしようか。

 

砦をくぐり抜けるような気がした。

 

そう。この恐怖の砦が僕らを引っ込みじあんにするのである。

 

もし彼らが笑ったら?もし彼らがビール瓶を投げつけたら?

 

可能性を考えたらきりがない。

僕はそれを押し抜けるように、気力で考えないようにした。

そうこれをすれば、その恐怖で歌を歌えなかった何億人の人の代表として、

 

僕でも歌えるんだ!

 

ということを示す歴史で最初の舞台だと思えばいい。

 

僕は歌い始め、だんだんと気持ちよくなっていく。

 

唇はしびれて、全身がしびれてきた。

 

そのとき、ほんのすこしだけど。ほんの少し、聴衆と通じ合えた気がした。

反応は?