はじめて人前で歌った日
人前で歌ったことなんてない。あっても合唱団でみんなで歌ったときか、カラオケ、聴こえないくらいの声でうたったことしかない。 「こいつはだめだ」と皆知ってる。
でもぼくはボストンではじめてカフェで歌う事にする。
もちろん声が出ないのではなかろうか?と恐怖はあった。
またもやスーパーサイヤ人(ぷつんときれた)となり。
ぼくにとっては周りがどうこうはもうどうでもよかった。
日本人のミュージシャンの女の子から聞いた電話番号にかける。英語もろくにわからないのに電話して、何曜日の何時にきてくれといわれる。
そこでサインをすればいいとのこと。
100ドルギターをぼくは片手に初めてのコンサート?に向かう。
Kendall Caféにたどり着く。沢山の人がギターをかついでサインをしようとしてる。 緊張が高ぶってくる。
カフェは暗く古い感じがする。多くのミュージシャンの写真があったが、有名な人がいるか確認する余裕なんてなかった。
僕はサインをしてスタッフに5番目と言われたので。それまで他の人の演奏を聴くことにする。だいたい10人か20人ぐらい歌うんだろうか。 ここのオープンマイクでは2曲ほど歌うことができる。
スタッフの女性が、DATE(伊逹)はダテって読むの? ときかれて「Yes, Da Te」と答えた。
デートと呼ばれずにすんだ。
1人目が1曲目を歌い始める。 僕は緊張の中でみんなの曲を聞く。どれもオリジナルの様だ。 とてもうまい。 日本じゃ考えられない。
僕の番がいよいよきて、緊張のあまりあたりが3倍くらい暗く感じた。 余裕な表情を自分自身に見せ、笑みが苦笑いになってるのを感じる。
ステージにあがってしまう。
「さて、こけてないし、忘れ物もないし、後は練習した歌を歌うだけだ。」
日本から来ましたと恥ずかしいことをマイクを通して語る…
2曲僕の暗い曲を続けて歌う
ふっきれた僕には、緊張なんかすぐ吹き飛んだ。
腰を掛け、マイクを調整してもらって。
左指をフレットに置く。人前で歌なんて歌ったことないから、顔をどちらに向けたらいいかわからない。
どうしたものかと思ったが。次のステップを考える。
歌詩の最初の文は覚えている。
マイクとの距離はこのくらいか。
目を空けて歌おうかどうしようか。
砦をくぐり抜けるような気がした。
そう。この恐怖の砦が僕らを引っ込みじあんにするのである。
もし彼らが笑ったら?もし彼らがビール瓶を投げつけたら?
可能性を考えたらきりがない。
僕はそれを押し抜けるように、気力で考えないようにした。
そうこれをすれば、その恐怖で歌を歌えなかった何億人の人の代表として、
僕でも歌えるんだ!
ということを示す歴史で最初の舞台だと思えばいい。
僕は歌い始め、だんだんと気持ちよくなっていく。
唇はしびれて、全身がしびれてきた。
そのとき、ほんのすこしだけど。ほんの少し、聴衆と通じ合えた気がした。
反応は?