男性ははっきりしていたくて、女性ははっきりしていたくない
女子学生とは幻想の世界にいる。
掴もうとしても掴めないような、清潔で静かで、透き通っていて母親でもなく同い年の女の子でもない。 彼女達に追いつこうとしたって、追いつけない。だって年上だから。 彼女は中学生から、高校生になり、大学生になり、大人の女性となる。いつの間にか彼女達は年下となり、青春時代に彼女達と重なる時代にいても、掴む事はできない。
ずっと年上の女子学生は、いつのまにか年下となり、感じること無しに幻想の世界にいき続ける。
彼女たちを追っていたのにいつの間にか追い越してしまった。
永遠につかむことのできない不思議な女性像を作りだす。
時も年も関係のないものなのだ。
制服に包まれてるあの姿は、戦前の時から生きているような、時を超えても同じ制服に新しい体が包み込まれているような感じがした。
僕の事を待っていた年上の女性達の事を家族に話したかどうかは記憶にない。何て言うか秘密で特別で僕の同い年の子たちに話せないような聖域の中にしまいたい体験。
学校のグラウンドから女子中高学生の校舎を抜けて、10分たらず駅までの道を小さな体の僕は歩いていく。
女の子達が楽しそうに二人で三人で何かを話している。 たった一人で、メガネをかけて、道をまっすぐみながら歩いている女の子もいる。
どんな会話をしているのだろう、どんな思いであるいているのだろう?
時が存在しない不思議な空間を歩いてるようだった。
僕はその不思議な世界にいる、憧れの女性たちの二人に駅まで歩いた。
傍から見たら誘拐されているようにも見えるし、女子中学生の弟にも見える。やがて彼女たち二人はなぜか一人になった。その理由は記憶にないけれど。残された彼女の顔には少し影がある表情があった気がする。
もしかしたら喧嘩したかもしれないし、部活が忙しくなったかもしれない。 転校したかもしれない。
駅までのわずかな異次元の世界で一緒に歩いた、残された一人の女子中学生はいつのまにかどこかへ消えていった。
いつも待ってくれている場所には二度と現われなかった。
名前も覚えていない、顔も覚えていない。でも彼女達は確かに存在した。
僕が小学2年に病院へ入院する前だったに違いない。退院を後に彼らを探すことはできなくなってしまったのが原因かもしれない。
僕の心に焼き付けた不思議な思い出