すぐその気になる
僕は数ヵ月後にKanaさんに会いにブライトンへ行く。
ロンドンには友達のヨウタがいたけれども、僕の心の中はまだ空っぽだった。
日本という国から自分をイギリスに投げ出して。今までの事を消去してきた。
新たな出発という言葉は前から憧れていた。
消去した心の中は何かで埋めたくてしょうがなかった。
一度しか会ったこともないのに、僕はKanaさんに興味が沸いていた。
今思えばただ何かで満たしたかっただけなのだと思う。 彼女とは共通点も少なく、強いて言えば向こうが興味があるかもしれない。程度であった。
ブライトンについて彼女とお茶をしたが、どうやら迷惑そうであった。 彼女のほうからも僕が気があることを察していたのかもしれない。
会話はからまわりするだけで、何しに来たのかわからず、ばかばかしくなって自分に情けなくなった。
彼女が僕にどれだけ好意をもっていたかわからないけれど、何度かメッセージを送ってくれいた気がする。そうでもなければ、僕もブライトンに行こうと思わないだろう。
途中で彼女の気が変わったか、面倒になったかわからないが、2度目に会ったときは間違いなく迷惑そうだった。
「わたしこれからしなきゃいけない事があるから」
と言われた。
会って1時間くらいですぐに別れた。
たしか、彼女は大学に通っていた。本当に忙しかったのかもしれない。
美術館の場所を聞いて僕はそこで暇つぶしをすることにする。
日本のテキスタイルの展示をしてて、なんだかさらに時間の無駄をした気がした。
なんだ異性に関しては全然成長していないじゃないか...とげんなりしながら。
僕はその日もやもやした気持ちでロンドンに電車で帰る。