家族とは
今思えば入院をしていたときは、世界で行われている外出自粛に似ている。外の景色は美しいが外に出れない。出口はそこにあるけど、出たら怒られる。悪いことをしていないのに牢獄に入れられた気分だ。
別の環境にいると、家族の見方もまた変わる。家族が他人のように感じ、病院にいる人が家族のように、家族にしたいと守りの心理に陥る。
父は仕事でいそがしいので時々しかこれなかった。 スーツ姿でやってくる彼はなにか不思議な感じがした。 家ではそんなに親しくなかったので、病院にやってきて
「いったいなんのようなのか?」と面倒な気持ちで思った。
もちろん嬉しかったが、何か他人のような肉親のような、なんともいえない気持ちに包まれた。
病院にいると自らどこかへ行く事はない。親戚や友達、看護婦や医者が僕のところへやってくるのだ。
そんなシュールな非現実的な世界で院長先生がやってくるときが楽しみだった。 とても感じの良いおじいちゃんで、7,8人くらい先生と看護士たちがぞろぞろと一緒についてまわる。
とっても威厳がありえらい人なのだなと感じた。
「小学校2年生から3年生になるのは、1年生から2年生になるよりもすごいことなんだよ」
と言ってくれた。 よくわからないけど、低学年から中学年になるということか。なんだかこの言葉を記憶して、とても嬉しかった。
同級生のおじいちゃんがこの病院の院長だと母から聞いたが、それは定かではなかった。
病院にいる全員の患者を診てまわるなんて大変な仕事だ。 みんなのこと把握してるのかな?と疑問に思った。
緊張もするので、ぼくは顔を真っ赤にしていたかもしれない。
担当医の中では若い先生と気があった。幸い陽気な男性の先生がいたので、会うのがたのしみだった。
病院というなれない世界でも家族というものができあがるものだとおもった。
見舞いに来る親族や友達が逆に外の世界の人間に感じた。