水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

ファスティング(絶食)をしよう ⑪ 小2の断食の記憶 規則を破る

規則違反の断食 

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病院で断食を始めてしばらくした。1週間くらいだろうか?

 

胃にご飯が入らなくなるのがわかると、体の司令部が、

「もうおなかが空くふりをしないでいいよ」と感覚系統に告げるのだ。

 

胃の病気だったので、胃が痛くてしょうがなかったのでお腹が空いているのか痛いのかよくわからなくなっていた。

 

ただご飯の話をされると、ひどくお腹が空いたのを記憶してる。

 

母がそれを見て耐えられずに、内緒でカステラを持ってきた。

 

僕はカステラは好きではなかった。

 

トイレには行けないのでいつもカーテンを全部しめて、尿瓶ですましていた。

もちろん、看護婦さんか、親戚がいないと点滴で片手がふさがっているのでできなかった。

親にしてもらうのは恥ずかしい時期だったので、違和感を感じた。

 

「トイレしましょうね」など言って、母が僕の顔を見ながらカーテンを閉めていくのを覚えている。

 

たしかカーテンは緑色であった。

 

規則を破ってそんなことをして良いものだろうか。

 

母も悪い人だと思った。

 

僕はしたくはなかったが、このときは逆に彼女の気持ちを落ち着かせたかった。

 

二人で泣きながら、小さい指に包まれたカステラを僕の口に入れていったのを思い出す。

 

カステラは嫌いだった、いや、このときから嫌いになったのかもしれない。でも久しぶりに物を食べたのでとても美味しかった。

 

断食をしているときに急に固形物を食べるのは危険で、しかも胃の病気をしているので治りも遅くなる。なんのために病院に入っているのかわからない。

 

彼女は父に相談したのだろうか。

 

僕が泣いたのは、お腹が空いていたというよりかは、彼女が僕をかわいそうに思っている情けの気持ちが心に入り込んでいって、自分がかわいそうに思ったからだ。

 

内向的であるぼくは、すぐに友達をつくれなかった。母もまた同類で、学校で他のお母さんと仲良くしているようにもみえて、さすがに大人だと思ったが結局は僕と変わらないのがわかった。病院では僕らは何か異端児な感じにも思えた。

 

このこっそりと食べた日を境に、すこしずつ僕は同室の人と話すようになった。