おまえならアメリカNO1の大学いけるぜ
以前にあったボストン博物館付属美術学校の不良たちとまた会うことになる。もうすぐ日本に帰る。ニューヨークに行って大学を見に行くと彼らに伝えた。彼らはいつも僕に会いたがっていた。
大学で彼らのスタジオに入る。授業が終わって、静かな、だだっぴろいスタジオで彼らと話した。僕が初めて僕絵を見せる。男たちは驚いた。
実は彼らはいつも僕におお口をたたいていた。 もしかしたら、お前みたいな若いやつはどうこうとか、偉そうな事をぼくにいってたような気もする。それが一転したのだ。いきなり頭を下げ始めたのだ。
時間がもう遅いので廊下の明かりも消えていた。暗闇の廊下からぼくは自分を眺めていた。
「こんなに絵がうまかったら、アメリカ一の大学パーソンズ入学も余裕だな」
みたいなことを言われた。
パーソンズ? アメリカ一番の大学?
日本の芸大も入れない僕が、アメリカの大学なんか入れるわけがない。そう決めつけていた。自信なんかこれっぽちもなかった。
でも彼らの目の輝き用は不思議に訴えるものがあった...
彼らが何も見えていないのではないか?と思った。
話をきいてると、なんか彼らが純粋な少年の様にみえてきた。不良な行動はいったいなんだったのか。なぜか彼らの言葉には説得力があった。 目を輝かせる男たちが、僕の絵を見てひどく感動してくれたことに僕は感動した。
なんとなく、不良たちの夢を僕に託していたような、そんな感じがした。
「俺らには無理だ、でもお前ならできる」と言っているかのようだった。
僕は嬉しい気持ちで家に帰る。
少し気分が晴れた。お先真っ暗の僕の人生に少し光が見えた。こんなことで一喜一憂していいものかと思ったが、誰かの心を動かしたことには変わりない。
家に帰るといつも皆がいる。
血の繋がっていない皆。違う国からやって来たみんな。時には知らない人がフラッとやってくる。それはイギリス留学がはじまっても。そんな感じだった。日本じゃ考えられない。
帰ると皆が待っていてくれて、それが誰でもいいのだ。
知らない人もときどき食事に来る。
友達にならなければいけない太鼓判などないのだ。
僕らのキッチンは裏側のドアから入ると窓から見える。熱気で窓がくもっている。
だれかいる。と思って、とんとんと窓をたたく。
だれもその、音に嫌気な顔を出さない。 にっこりと手を振ってくれる。
それが誰でもかまわない。
誰でも構わない人がノックをして、誰でも構わない人が手を振り、誰でも構わない人が部屋に入ってくる。
そして誰でも構わない人が受け入れて。 一緒に食事をするのだ。
あたたかい家族に包まれて。楽しい明日の事を考える。