猫の力
コンサートが始まる。
前座のバンドはまあまあであった。
Gunnelが二人で写真を撮りたいといっていたので僕のミノルタのアナログカメラで撮ってあげた。
どうやらこの子は相当な音楽fanのようだ。
僕は再びステージ前にもどる。
その時僕はなにかとてつもない力を後ろから感じた。
僕の人生はここから多く変る。
後ろをみると、女性が立っていた。
いや沢山の人が立ってはいたけれど
彼女だけが眼に留まった。
彼女は遠くをみている。
背は高くなく、不思議な雰囲気の女性だった。
僕はとてつもなく惹きつかれて、声をかけたくなった。でも僕は
「恐くて」
できなかった。
Cat powerのコンサートがはじまる。
はじめての彼女の生コンサートなのでひどく興奮した。
彼女は前髪をおろして、眼が一切みえなかった。
T-shirtにジーンズ。普通の女の子だ。
彼女の声はやっぱりよく、僕は声をしっかり吸収していった。
ところが、彼女のショーはめちゃくちゃだった。 演奏してる途中で
「ああ、なんか気分じゃないわ、この曲もうやーめた」
といって演奏を中断したり。
「ちょっとここは暑い、照明があたりすぎて、みんなにみられちゃう」
そしてマイクスタンドを暗闇のほうへ動かし、暗闇で歌いだす。
「チケットにお金払った人にあやまらなきゃね」
と言って
なんとものの20分くらいで彼女は演奏をやめて、逃げ出すように会場を去っていった。
「な、なんだこれは」
特にブーイングもなく、みんなは楽しんだようだ。