水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

純粋であると親友を選び間違える

親友である条件

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Artwork by Satoshi Dáte "shun sun"

「傷はのこってないよな」と手術後に僕が気にしていた手術痕について、バスで後ろに振り向きながらやさしく僕に語りかけた。

なんで彼はいつも僕の前に座っているんだろう。

 

彼が僕の前に座りたいのか、僕が彼より(もしくはだれよりも)後ろに座りたいのかわからないけど。彼はいつもバスの中で僕の前に座っていた。

 

そして後ろに振り向きざまになにかいうのだ。

 

もちろん二人で乗るときは隣に座るが、いつも彼の恋人のMinと隣にすわっているからこうなる。

彼女はあまり自分をださない、性格が強そうだけど、彼のただ側にいるだけという感じで特に何か意見を言ったりはしなかった。

 

彼の言葉は僕をほっとさせた。傷が残らなかったのは知っているけれど、一緒に住む彼にいわれるのはとても心強かった。

 

かれはまるっぽくて、色黒で、やさしい雰囲気を持っていたが、結構な自分勝手であった。 僕もこの頃は若く、人の見る目が全然無かった。純粋というかばかというか。

 

痛い目に会ったり、経験をつまないと人というのはわからないものだ。

 

日本で買っていた、かわいい柴犬もおなじだった。人懐っこくて犬懐っこかった。 どんなに怖そうな犬でも、

 

「はっはっ」と喜んで飛んでいってしまうのだ。

 

みんなが自分のように純粋で友達だと思っているのだろう。

ときどきこういった女性が欧米に留学してひどい目に会う。 男性でもいるだろうが、やはり今の世の中では女性がターゲットにされる事が多い。

 

さて、そんな柴犬のような僕は気づかないうちに利用されたり、この人はいい人だと勘違いしたりしていたのだ。

 

ある日、彼がテレビを友人からもらってきて、僕がその思いテレビを運ぶのを手伝った。

 

「いやーサトシ、ありがとう。これから僕がいないときでも何時でも観ていいからね」

とさわやかに言ってくれた。

 

僕は彼とも充分親しくなったとも思い。 お言葉に甘えて自分の英語の勉強のために彼の部屋に入ってテレビを見ていた。

 

彼が家に帰ったときに僕が部屋にいるのをみて、非常に不満そうな顔をした。

 

「サトシ、僕がいないときは勝手に部屋に入らないでくれないかな?」

と冷たく言われた。

 

僕の英語は中級レベルであったが、彼はたしかにいつでも見ていいと言っていた。 もしかしたら彼が言っていたのは、「僕がいるときに、僕がいいといったら、一人でみていいよ」という事だったのかもしれない。がそれでは僕がいないときに観ていいとはいえないのではないか。

 

どちらにしても、彼の態度がガラッとかわって、そこで僕は

「この人はやさしい人ではないのかもしれない」

と感じ始めた。

 

どこかの場所に行くと

 

僕たちは

 

「親友」

を作りたがる。

 

僕はこのころ彼が「親友」だと思っていた。

 

条件として

「同性だし」

「同じ場所に住んでるし」

「アジア人だし」

「年も近いし」

「同じクリエイターだし」

 

などと勝手に条件で親友を作るのだ。

 

考えてみれば僕の近くにいた、女性たちの方がずっと近かったのに僕はこのとき勝手に彼が親友だと勘違いしていた。

 

そして決定的に彼が「友達にはなれない」

と思った瞬間があった。