水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

エンジンがかからないポンコツ車で西洋を旅する

順序は覚えていない



フェデリコがいる(旧友、ローマ人でロンドンでとても仲良かった、彼のヴェスパの後ろに乗り、ロンドンやローマを乗り回した。一度ボロのFiatの500でローマから無謀にも南イタリアへ旅した)

 

僕はやっとの思いでここに辿り着いたようだ。

iPadをつかい、フェデリコ自身とフランチェスコ(過去一緒にロンドンで住んでいた、今度音楽のスタジオを見せてほしいと思ったが、かなり前に会ったきりで結局会えていない。距離感を感じるが、自分も距離を置いているようだ)が出ている映画かドラマをみせる。フランチェスコの顔は意外とすっきりしていて、若さを感じていた。今彼は頭を剃っているので不自然に思える。2次元的な嘘の彼がそこにいる。

 

フェデは彼を好んでない。また彼に向って罵り言葉を発していた。

 

「こんな言葉を使うんだ。それにしても彼は少し面倒になったな。会いたいとそれほど思わなかったのはここに理由があるかもしれない」

 

僕はぼんやりと彼の印象を頭の中でつぶやく。

 

僕はレンタカーのガレージにいる。 天井が少し高く、地面はコンクリートでゆがんでいる。汚いオフィスがあり、10人ほど若者や中年の男が群がっていた。女性はそこに一人もいなかった気がする。

Yohji Yamamotoが大好きな背の高い肩幅の広い元アシスタントの男性らしき人と、僕はベルリン、もしくはどこかに行って買い物をして飛行機に乗らなくてはいけなかった(現実世界でも同じようなことをしなくてはいけない)。

 

連れの彼は西洋人の感じもした。どちらにしても頭があまりよくなさそうだ。 彼にお金があまりないので安い車を借りた。ぼろぼろのクラシックカーで、車体と機械の部分が離れて今にも外れそうだった(その前の日にデイケア―の車の車体が車いすに乗る人を入れるために低くする場面をみた)。

 

僕はこの車がただのアンティークにしかみえず、エンジンがかかると到底思えなかった。

僕らはお金を払い、領収書もなしに乗り込む。

 

まわりの親切な男性たちは

「これはぶつけたら、壁や相手に傷がつく、カーヴィング(だか何だか言ってた)が必要だよ。」

 

と専門用語を言う。

 

連れは急に車をうごかし、思ってた通り後ろの壁にぶつけ、カーブしたあとに前の壁に車をぶつける。

 

「ほら傷がついたよ」と壁に向かってある男が言う。

 

「10万円(1000ポンドと言っていたような気がする)」だな

という。

僕らはそのお金をはらいたがらなかったため、たまりかねてみんながナイフ(こんなのでいいの?)で簡単に削り始める。 ぼろぼろの車体から錆が落ちる(前日かぼちゃの皮をナイフでそぎ落とす、ここ数日、絵の表面をペインティングナイフでそぎ落とす動作をした)。

 

車に傷がつくのではなく相手の車や壁に傷がつくことを懸念してるみんなが理解できなかった。

 

途中で僕は大きな古い西洋の建物に入っていた。面倒であったが美大生の制作をみる。

そこにベルリンもしくは遠くにある大学(?大学院?ある種の試験)に合格するために基礎科のような科に所属する「彼女」の作品があることを思い出す。

 

「彼女」の名前が漢字であらゆる場所に描かれてある作品が高さ5m、幅3mの大きさで壁と部屋の奥の台におかれていた。紙はうすっぺらく、とてもアマチュアなプレゼンテーションだった。

 

作品はマンガやイラストでお世辞にもうまいとは言えなかった。現代の少女漫画のようなスケッチがいくつか描かれている。

 

ドイツ(だとおもう)の小さな町に同じ漢字で同じ名前の人間なんているわけないと思った。偶然であろうと思ったがとても複雑な思いになる。 作品は「彼女」があたらしいこころみを0から始めたようにも思える。

 

そこで僕は「彼女」を探し求める。 似た後ろ姿や、似た顔の人間がたくさん現れる。

 

僕たちはもう行かなくてはいけなかった。幻となった「彼女」のことは忘れ先に進むことにする。

 

その時一緒に作品をみてまわった友人は女性二人だった(いまレジデンシーをしているギャラリーのスタッフに女性が二人いる)

 

ガソリンスタンドで僕らは(また男性と二人きりになる)ガソリンを入れる。なんども失敗して僕はガソリンまみれになる。

 

ちゃんとガソリンが入っているかもわからなかった。 店に僕はお金を払う。

 

駐車場には女性たちがピクニックをしているのか、賑やかそうだった。

 

僕はふと気が付き連れの男性にこう言う。

 

「このレンタカーはどこに乗り捨ててもよいんだよね? 会社の名前を覚えている?」

僕は知っていたけれど確認のためにはっきりと彼に問う。

 

案の定、彼は困惑して、答えを知っているようだったが

「大丈夫だよ」

 

と取り留めもないことを言った。

 

僕はとてもつもない不安に襲われる。また戻らなくてはいけない、この車で遠くまでたどり着くのだろうか? レンタカー屋のところに戻り、別の車に変え、ガソリンを抜き取って新しい車に入れる。そして都市部に同じ会社があるかも確認しなくてはいけない。

そして僕は自分が面倒なことに巻き込まれ、見失っていることに気づく。

 

僕への思いが強いということは、「彼女」もとても強いということ、ならば「彼女」が逃げ出せない状況にあることに、なおさら苦しんでいるということが手に取れる。

 

また自分へのこの不安や苦しみは「彼女」が持つ苦しみを感じているのだと確信した。

 

夢は僕らを混乱させるけれど、つねに中心であるように意識の中で整えれば、無意識の自分も正しくなるであろう。

 

Happiness: 2

Reality: 4

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