水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

あの程度の女なら韓国にいくらでもいる

Choの秘密の暴言

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Artwork by Satoshi Dáte "Mochiho"



唖然とした。まさかこんな言葉が彼から出るとは。

僕らは仲がいいのか悪いのかよく判らなかった。

 

ファッションフォトグラファーを目指していた彼なので、親近感を感じていた。

彼はすでに大学からオファーをもらって、LCC(London college of Communication)の1年間のプロフェッショナルコースにいく予定だった。

僕はLCF(London college of Fashion)のファウンデーションコース婦人服に行く予定だった。

 

年上だったので、しかもアジア人だったため、先輩のようにふんふんといつも彼のいう事を聞いていた。

 

僕らはよくいろいろな場所に行って遊んだ。 もちろん芸術に関して沢山話せるから勉強になったし、面白かったけれど、いま思い出してもこの人と深く繋がってる感じはしてなかった。

 

人、友達、恋人も、深いつながりが無かったら空気のようなものだ。

うわべだけで話してても、自分が深まらない。

 

自分と自分の周りの時間も深まらない

 

彼が部屋に暗室を作っていたので、写真の現像は教わった。技術的な事はいろいろ教えてくれたけれど、なにか精神的なところで学んだ記憶は無い。

 

楽しい時間を過ごせたこと、兄のように接してくれたこと(これは韓国的なものかもしれない)は感謝しているが、ある日のことで彼への信用を一気に失った。

 

忘れもしない日、

 

気温は丁度良い感じで、僕らは2階建てバスの2階に隣りあわせで座っていた。 Aldgate East駅のちかくで僕らの家がすぐそこだった。

古いロンドンバスが大きくカーブして、2階がふらっと傾いていくときに僕は彼の彼女でいっしょに住んでいるMinについて聞いた事があった。彼女をどうおもっているのか?

 

「あの程度の女、韓国にいったらいくらでもいる、俺は都合がいいから付き合っているんだ」

と彼の口からすらっと出てきた言葉。

 

耳を疑った。

 

特に彼はおおらかでやさしそうな雰囲気だったので、クールなかっこつけたタイプでもなかったからだ。

 

僕ははっとして、彼の横顔を見たが、特に自分のいった事に後悔もなさそうにけろっとしていた。

 

僕が男性だから信じて言っているんだな。と僕は感じた。 多くの日本人もまた男性が集まると女性の話題になり、程度の低い人達は男尊女卑な発言をする。

 

僕はこのときさらに質問はしなかった。

 

「じゃあなんで付き合っているの?」

と言ったところで、彼は都合がいいからというだけだろう。 家賃がやすくなるから? 寂しいから?

 

だとしたら、そんなかっこつけたことを言える人間ではない。 矛盾していると思う。

 

それに「あの程度」というのが良くわからない。

 

ぼくはあきらかに、顔や体のことを言っているんだなと感じた。

 

僕はこの頃若かったから、そして日本で育ったから、女性を製品としてみている部分があったとおもう。

 

「綺麗」とか「綺麗じゃない」とか「スタイルがいい」とか

 

から、彼の言ってる事はある程度理解したが。 なにかそこにおおきなギャップを感じた。

 

この人とずっと近くにいるのは良くないなと思った。

 

そこで、Min(Choの恋人)の笑顔が浮かんだ。 彼女がとても可愛そうに思えてきた。

 

けれどこの事はMinには伝えなかった。

 

そしてこのへんてこなぽっちゃり韓国人の男性は不気味な従兄弟を家に連れてくるのだった