買い物に
ヒロシさんと買い物に行った記憶がある。
そこは街の中心で、ごちゃごちゃとしたところだった。
ここのお店はとにかく安いんだ!とかなんとか言ってたような気がする。
今思えばヨーロッパにあるprimark(とっても安いチープなものばかり売ってるアパレル会社)のような場所だったかもしれない。
僕はセンスもなかったし、なにを買ったらいいか、はっきりわからなかった。なんでそれで僕がファッションをやろうとしていたのか自分でもわからなかった。イギリス留学を始めた時も女の子たちにダサいと言われていたから。
そこで灰色のやくざが着るような半袖シャツを買い。嬉しいのか何なのかわからず。ヒロシさんもまた何か買い。家に帰って、皆に見せた。
「ヒロシが買ってきた服は若く見えて、サトシのは年取って見える。」
と言われた。
その日夜、僕は午後一人で留守番をしていた。
電話がかかる。
何と言ったらいいかわからないが、とりあえず電話に出る。
「Hi. I am..」
ヒロシさんと一緒に仕事をしている、あの作曲家だった。
「He is not at home」
と伝えて、彼はまたかけなおすと僕に伝える。
受話器を置く。
この前彼の楽譜直しを手伝って、彼がここに電話をしてきたのはずいぶんと不思議に思った。
スゴイ売れっ子だとはきいたけど、海賊版でしか売っていないので200万枚売っていてもビルボードチャートにのらない。
日本へ帰国後、ある雑誌に彼のことが大きくレビューされていた。 彼の顔をはじめてその時みた。
ポーランド系できりっとした顔だった。
「この人と僕は話したのか」とそう思った。
ワイエスの事といい、彼といい、有名な人も近くに存在する事もあるのだな。
別にそれは不思議なことではないのかもしれないと思ってきた。
イギリス留学でもとても不思議な事が沢山起きた。
有名人だって、憧れのアーティストだって会いたいと思えば会えるのである。
そしてそれは沢山現実になった。