優秀な人に囲まれて生活
僕はこの頃絵を沢山描いていた。日本で描いた絵をスケッチブックに写真を貼って持ってきていた。ブルガリア人のIoana、クロアチア人のEvaと韓国人のDo-yunは僕の絵をみてとても感動してくれた。日本の外に出て、会って間もない異国の人に日本人の描いたものを評価してもらえるなんて思ってもいなかった。
Evaはとても親切な人で、いつも僕の英語をなおしてくれた。わざわざ時間をさいて、僕に英語を教えてくれた。
Evaはピアニストでもともとはクラシック出身、今はバークリー音楽大学でジャズを勉強している。バイトで教会でピアノを弾いているらしいが、クラシック音楽の仕事がいそがしくてジャズの勉強が追いついていないようだ。
ヒロシさんが言っていたが、楽譜が真っ黒(音符や記号でいっぱいということ)な曲を弾きこなせるほど優秀だそうだ。 Ioanaはボストン・コンサーバトリー(音楽大学)。Do-yunはEvaと一緒のバークリー大学。3人とも優秀で、scholarship(スカラーシップ、奨学金)を全額か半分もらっていると聞いた。 入試の時に条件がそろっていると奨学金が出るらしい。たとえば、両親の収入が少ない、入試でトップクラスのスコアを得た人などだ。
ヒロシさんもアメリカの管楽器での作曲コンペティションで1位を取ったことがあるらしい。そんな優秀な音楽家に囲まれてアメリカで生活できるなんてついていた。
食材を買いにスーパーに行くことにする。Ioanaと一緒に大きなスーパーまで歩く。彼女はアイスクリームだけしか食べないのでアイスクリームだけ買いに行きたいとのこと。
一瞬で恋に落ちて一瞬で恋に破れた女性とスーパーマーケットにデートとはなかなかない。彼女は何も考えていないと思われたが。すこしドキドキ嬉しかった。これが原因かわからないけど、それからというもの女性とスーパーマーケットにいくのは好きだ。その人がどんなものを食べるのか、どんなものが好きかわかるから。
冗談かと思ったら本当にアイスクリームだけ買っていた。思った通りスーパーは大きくて、何やらすべてカラフルでまたぐぐぐっと絶望の不安の波にやられそうになった。どうやら自分の生きていた環境にはないもの、慣れ親しんでいないものを感じると、不安になることがわかってきた。
何を買ったらいいかわからないけど、とりあえず食パン、お肉と野菜を買った。殆ど家族と住んでいた時は母親が作ってくれていたので料理なんてろくにできない。でもするしかないので見よう見まねでやってみることにした。
ハッキリ言ってここまで何も考えずに来た。 でも実はこれでよかった。
というのは、こうまでしないと自分の状況は変わらないと内心思っていたからだ。 日本にいて何をしたらよいかわからず、将来が不安で、先が真っ暗で、何をしてもうまくいかない。
真っ暗な闇にある大きな壁を目の前に、押しても押してもどうにもならない場所にいる気がした。
そんなときは
自分をボードゲームの駒と考えて、無理やり自分を別のスタート地点に持っていってしまえばいいのだ。
まさに環境を変えるというのはこういうこと。押しても引いてもどうにもならないのなら、それしか方法はない。
もしあなたもいま、先がみえなくて、どうしたらいいかわからない、何をしたらいいかわからないなら。簡単。 ただ場所を変えればいい。
場所と言っても
「自分が直感的に、ここが良いかもしれない」
という場所。
何をしたらいいかわからない中でも。 暗闇の中でも。 心を沈ませれば、絶対に小さな光を見ることができる。
その方法をもう少し次の記事で詳しく説明する。
続く>