そのうち純正日本人のほうが珍しがられるのだろうか
I am floating entity. I don’t feel like a man.
自分が人間なのか、存在なのか、男なのか、女なのか、わからないまま。自分がなにかであると無理に信じていた。もしかしたら皆がそうなのかもしれない。自分たちはただの魂で。
浮遊しているだけなのに、自分は男だとか何歳だとかステータスだとかそんなものばかり固執しているから人生うまくいかないのかもしれない。
僕のイギリスに留学する役割は、男性であることを証明して、人間であることを証明して、思い描いていた白人の女性に恋をしたり、ハーフの女性をおっかけたりして。
そんなものばかりだったのかもしれない。
東京の公園で、似顔絵かきをしていて、声をかけてきたイギリス人と日本人のハーフの美しい女性が、イギリスに来たら連絡してくれと言った。
僕はその女性、Maiに電話する。
電話には弟がでた。
日本語があまり話せないようだけど、頑張って日本語で話してくれた。彼ももちろんハーフである。
別の日に電話したら彼女が出た。
ちょうどロンドンに行く予定があるみたいだった。
彼女はロンドンから離れたところに住んでいた。
ハーフの美しい女性と話をして、イギリスに居る間に会えるなんて憧れていた世界なわけではないけど、なんだか自分の人生じゃないみたいで非現実的に感じた。
しかも僕には友達は殆どイギリスにいない。日本にもいない。
知らない惑星にやってきて、ふわふわした今にも真っ逆さまに落っこちそうな雲の上にいて、こんな世界を繰り広げるのがワクワクした。
僕らはカフェで会って、少し話をした。
今思い出しても、その時に存在した、背景に居るイギリス人と今のイギリス人は違う気がする。
なんというかまだもっと魂を感じた。
暗がりのカフェでがやがやしていて、僕はまだ慣れない外国で。おどおどしていた。
もしかしたらそのせいかもしれない。背景の、backgroundのイギリス人は何千年も変わらないのかもしれない、まるで映画のエキストラ、バックグランドのように。
ボストンに行ったから、海外は似たようなものだと思っていたけど、留学してからずいぶん違う事に後で気付いた。 すこし甘い考えで来てはいた。
彼女と何を話したかは覚えていない。
セントマーチンズ大学には兎に角入るのは難しいという事を言われた気がする。
相変わらず彼女はクールであった。
髪の色がピンクだったのが金髪になっていた。
未だに彼女がデイジー・チェインソーのケイティに見えてしょうがなかった。
ケイティーのおとなしくて礼儀が正しいVERSIONだ。
僕らは別れを告げる。
そのあと僕はアメリカのロックバンドのコンサートに向かう。