水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴る不思議なドキュメンタリーストーリー

ボストン美術館

 逆カルチャーショック

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眠れない日が続いた。 英語は何とかして話すようにして、聴くようにした。アメリカ人はこの家には住んでいなかった。 ヨーロッパ人や韓国人の訛りなど違いも分からず、必死になって聞いていた。しきりに彼らは僕にいろいろ話してくれる。 なんども聞き返すのがとても悪い気がした。でも彼らはニコニコしながら話しかけてくれる。僕の英語は酷い発音でしかも、単語だけで話して、文章になっていなかった。 

特にやることはなかったが、3週間後にニューヨークに行くことに決めていた。そこで大学を見ることができたらと思っていたけどどこに何の大学があるのか全然知らなかった。

 

とりあえずボストン美術館に行くことにした。家の目の前にある綺麗な公園を通って行く。ボストン美術館はすぐに見えた。 公園のすぐ外に美術館があるなんて思ってもみなかった。

 

ボストン美術館は静かで日本の美術館の雰囲気となんら変わりがなかった。

 

静かで、僕が好きな空間。中学の頃からひとりで美術館に行くのが好きだった。そしてそこには必ず美しい女性がいて。またその女性のそばには感じの良い男性が横にいる。 そして僕はその二人の距離が好きだった。近くべったりしてるわけでもなく、離れすぎず。 素敵で大人な印象を受けた。ぼくの恋愛の理想像だったのだと思う。

 

そんな静かな美術館の空間につつまれながら、印象に残っているのは日本のコレクションだった。

 

有名な日本作家(誰だか忘れました、すみません)が、ボストン美術館に来て日本コレクションをみてショックを受けたというエピソードをきいたことがある。 

 

逆カルチャーショックである。 日本の素晴らしい芸術は西洋で評価され、丁寧に保管されているということだった。

 

まさに僕はその作家と同じ印象を感じた。

 

「これは素晴らしい...」

 

ボストンに来て2日目に逆カルチャーショックをうけているのだ。いやこれは逆という表現は変かもしれないが。 こんなものがあるとも思わなかったし。 これは今思えばキュレ―ションのスキルでもあったと思う。

 

日本の古い日本画や工芸品はなんだか偉そうに置かれているが、なんだかよく伝わってこない。

 

なんというかストレートに心を貫いた。

 

曽我二直菴、曾我蕭白、尾形光琳。

特に曾我蕭白の竜の目などみてみると、如何に漫画が日本画から影響を受けたかがうかがえる。また彼らは芸術をこんなモダンに200年前から表現できてたのがすごい。

 

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日本のものだけれど、彼らのキュレ―ションの力に圧倒された。全ての作品がそれぞれの作品と空間の中でアートの音を奏でている。 どこの部屋に行ってもアートのオーケストラがついてきて素晴らしさを表現してくれるのだ。

 

なんとなく、日本のものをみて少し安心した。日本のものがこれは評価されてここにあるんだなぁと。 僕の日本人と言うアイデンティティーはこれからどんどんと自分に消化されていくのだが。この時は自分の日本人意識は強かったと思う。