水に浮かぶこころ

英国在住アーティストが綴るドキュメンタリーストーリー

意外な扉

 

母校へ訪問

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                                                                                           illustaration by Satoshi Dáte

いい考えがあるからもし受験がうまくいかなかったら、僕のところに来るといい。と先生が言ってたことを、真っ白になった頭の中からぼんやりと浮かんできた。 

 

電話で学校に連絡してアポイントを取る。 駅から続く何年間も通っていた並木道を歩いていく。 もうこの学校とは関係がなく、僕は大学にも入っていない宙に浮いた感じの気持ちで学校に向かっていく自分を不思議に感じていた。 いつものように未来のことなんて何も考えてないような無邪気で子供のような中学生が走り回っていた。全ての光景はからっぽにみえて、今まで固執していた高校卒業すること、大学入学しないといけないことなど、人生で通らなくてはいけない必要不可欠な事とプレッシャーを感じていた自分はどこかにいっていた。

 

職員室の前は静かな気配で、僕は部外者として中に入る。考えてみればもう先生たちに注意されることもなければ怒られることも無いんだなと枠から外にでて安心した気持ちだった。先生がいつもの調子で現れ、応接室に僕を招くと話を切り出す。 意外と僕の受験の失敗に対してネガティブなことは言わず、「まあいいさ」ととても小さいことのように語ってくれた。 彼は

「僕の知り合いがボストンに住んでいて、気晴らしに行ってみてはどうか?僕と同じミュージシャンで面白い人だからお願いしたらいいと思う。これが電話番号」

と言って紙に書いてあるアメリカの電話番号をもらう。

「君が行きたいイギリスとは違うけれども、行ってみたらどうかな?」

僕は少し混乱したが、だんだんと興奮し始めた。 

「ボストンてニューヨークに近いですか?」

と僕は近いといいなと思って聞いた。

「ああ、すごく近いよ」 

と返事が返ってきた。 その時ニューヨークにすごく憧れを持っていた、ニューヨークにも大学はあるに違いないし、もしかしたら自分のやりたいことができるかもしれないと思った。 その時僕はうっすらとファッションやりたいなと考えていた。今思えば不思議な子供だった。 僕は本屋で女性と喋ったこともない、学ランを着た中学生が、綺麗な女性たちが周りのなかでファッション雑誌を立ち読みしていた。 ふむふむという感じで、いろんなセンスの良い雑誌から、何か何まで読みこんでいた。 古本屋に行ってファッション雑誌を買い漁った。 新刊は高いので、買いたい雑誌を記憶して数週間後に目当てもの雑誌を古本で買った。 しばらくすると恐ろしい量になって、好きな写真を切り抜いてファイリングしていった。

 

未知の女性の美しさと憧れ、その美しい体を包み込む色鮮やかな服を見て無限の可能性に魅了された。 なにが起こるか全くわからなかったけれど僕はボストンに行くことに決めた